人が集まる場所づくり
場所は兵庫県たつの市。このころはまだ定められていませんでしたが、現在では重要伝統的建造物群保存地区に定められている龍野伝建地区。この中に明治中期から残る小料理屋であった場所を、マチの住民・市内外のマチに観光に来られた人々が、カウンターや客席で一緒に飲み交わせ、根付いた暮らしを大切に残していくためのコミュニティバーをリノベーションしました。残っていたカウンターを生かすことで、従来の姿を残したつくりとしました。
敷地一杯に建築された建物の約半分を減築することで、余白をつくり、ウッドデッキと地域の植生に合う落葉樹の中庭としました。
減築という選択と可能性
既存の建物は、敷地いっぱいに建物が建っている、建ぺい率100%の状態で、いわゆる違法状態でした。それにより、建物内部の空気環境は非常に悪く、湿気の抜け道が確保されておらず、建物にとって良くない環境でした。
古くからの木造密集地では、江戸時代からの税制の名残で、道路に対して間口を狭くつくり奥に長い、うなぎの寝床が多く、かつ建物は隣同士がべったりとひっついた状態が多いのですが、湿気や採光対策として、中庭がありました。この建物は間口が広いものの、それにちかい状態が起きていたため、同じ発想で、中庭を作ろうと考えました。
そのために減築をしようと。
植生に合わせた木を植える
減築は手作業により行い、無事中庭となる場所が生まれました。中と外をつなぐ広い縁側のような場所へ。
さらにここに四季の変化を表現する2本の樹木を植えようと考えました。アオダモとカエデという落葉樹を植えたのですが、そのあたりの山々に生えているものと同じです。これらは広葉樹といい、基本的に使い物にならない雑木というカテゴリーに属しており、スギやヒノキとは違ってうねっています。建材としては使いにくい。
ただ、庭に植える木としては最適で、空間に豊かな風景を生み出してくれました。庭師さんと私の二人で、土づくりから植えることまで行いました。
場所:兵庫県たつの市
用途:飲食店
規模:木造2階建
延べ面積:95.77㎡
施工会社:N-style株式会社
写真:terap/寺下純哉
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